ただの言葉

愉快なオタクになりたい

あやめはNEVERLANDに咲いている

お題「私のNEVERLAND」

 


美しい。美しい。美しい。幻想的だ。すごい。加藤シゲアキってすごい。綺麗だ。美しい。世界がひとつ生まれた。やっぱり加藤シゲアキはすごい。
そんな言葉をいくつ並べても私があやめについて語り尽くせることは向こう100年無いでしょう。それぐらいあやめは美しかった。いや、「美しい」だって充分力のある言葉なのにそれを何度繰り返しても加藤シゲアキが創り上げた世界には遠く及びません。それでも私は小さな語彙の箱から選びとった言葉を並べて愛を伝えたいのです。

先日の東京ドームで初めてあやめを見ました。正直なところ、加藤シゲアキが創りあげる「あやめ」という世界に圧倒されてきちんとした記憶がありません。ですが、私が見て、私が覚えていることを、私の主観の中で、少し先の私のために書き残したいと思います。もし何かが現実と違っていたとしても、私にとってはこれが「正解」なのです。

前の曲のアウトロが消えた頃、ふらふらとセンターステージに現れてパタリと倒れる「彼」。照明の落ちたドームの中心で「彼」は吐き出すように歌います。そして「彼」はそのまま座り込み力なく歌い続けた。そんな「彼」の元に一人二人と集まりはじめる白い「彼ら」。差し出された救いの糸を「んなもんいらねえ飛んでやらぁ」と自らの意思で手放し、「彼ら」を振り切るように「彼」は坂を登った。坂を登った先で「彼」がドアを叩くともう一つの世界への扉が開き、「彼」は次の世界にへ歩踏み出します。あまりの迫力で息を吸うことすら忘れていたあの時の私には考える余力などどこにもありませんでしたが、リフターによって創られたこの「坂」は、彼の苦難を表していたのかもしれないと今の私は思っています。そして苦難の先に開けた次の世界で「彼」が手にしたのは1本の旗だった。くるくると巻かれた旗がその姿を現すと、そこには虹がありました。そして「彼」は虹をはためかせ、声なき声で叫びます。「俺はここにいるぞ」と。それは見えない誰かに向けてであり、倒れこんでいた少し前の「彼」自身に向けてだったのかもしれません。そうして「彼」は坂をくだり、「彼ら」の元へかけてゆく。「虹を歩いていく」と決めた「彼」が「彼ら」の中心に立ち、自らの力で掴み取った虹を操ると、そこで「彼」のモノローグは終わりを告げるのです。

10日に見た時「あっ、ドラクロワだ…加藤さんは民衆を導く自由の女神なんだ……」と思いました。「虹」の上で「虹」の旗をはためかせる加藤さんは、ただひたすらに美しかった。さっきも言ったように、強い言葉であるはずの「美しい」でもあの世界を表しきることはできないけれど、私は「美しい」という言葉を使いたい。今年でジャニーズに本気で興味を持ってから7年になり、両手では足りないぐらいの回数コンサートを見てきました。でもあんなに美しい世界は見たことがないし、あれほどみんなが素直に賞賛を表した拍手は聞いたことがありません。あまりの美しさで全く動けませんでした。ソウルメイトである双眼鏡を覗くことすら忘れてひたすら目で加藤さんを追っていたことを覚えています。その場で何かを考えることなどとてもできませんでした。でも、「あっ、あれは芸術作品なんだ。だから私は動けなかったんだ。ただただ加藤さんに釘付けになるしかなかったのだ」と帰り道を歩いている時に気が付きました。ここまで考えたところでライナーノーツのログを見てみたら「自分の芸術観を全てこの曲にぶつけてみる」ことの言葉が。答えじゃん!ここに答えあったじゃん!!2ヶ月も前から加藤さんは答えを教えてくれてたじゃん!!!
なぁーんで気付かなかったんだろうと思う反面、考えて辿り着いた答えが加藤さんのやろうとした事だったことが少し嬉しくもあります。

 

「間に合わなかったらどうしよう、今年は俺だけソロ無いとかありうるかもしれない」とか言ってた人間が見せるものじゃないですよね、これ。きっと5年考えても私には創れない。それをドラマの合間にギター弾いて曲作って、新刊書くのと並行しながら演出考えて、その合間にたくさんたくさん他のお仕事もして…ってしてる人間が創ったなんて信じられます?ここまでくるともう尊敬と羨望を向けるしかない。「彼氏が優秀すぎてちょっと劣等感を感じる」といった友人がいたけれど、今なら彼女の言葉がわかります。別に加藤さんは彼氏じゃないけれど。

加藤さん本人はポコポンペコーリャで「シゲは魔法が効きやすい体質なの!」ってかわいく言っていたけど、私はずっと加藤さんのことを魔法使いだと思っているんです。だって言葉一つでみんなの心を踊らせて、メロディ一つで誰かを勇気づけるから。彼の頭の中にたくさんの魔法が詰まってるんだろうなって私は思って。そのうちの一つがあやめで、6月15日のシゲクラなんです。魔法使いに惚れたんだから、きっとこれからも私は幸せになれる魔法をかけてもらえるんだろう、媒体がなんであれ加藤さんがかけた魔法はきっとすぐにわたしを元気にしてくれるのだろうと予想できることさえも嬉しい。

5年半前の冬、図書室の書架に並んだばかりだったピンクとグレーを手に取ってから、私はずっと「作家・加藤シゲアキ」のファンです。作家の素性を必要以上に知らないようにするというマイルールのせいで「NEWS・加藤シゲアキ」に辿り着くまで4年近くかかりました。あの冬、ピンクとグレーを読んでよかった。4年後の冬、ピンクとグレーをみてよかった。自分の愛した作家がこんなにも美しい世界を提供してくれる人だったなんて、ピンクとグレーを手に取ったあの時誰が思ったでしょうか。
私にとって「好きな作家」は「私を私たらしめる要素の一つ」です。要素の一つが加藤さんなのだから加藤さんが創りあげる世界を嫌いになるわけは無いのですが、やっぱり私はあなたとあなたが創りあげる世界を好きになれてよかった。加藤さんが創りあげた愛を掲げた世界の中で、私が掴み取った愛は私の加藤さんへの愛でした。

「加藤さんがあやめでリフターをかけ登る時、唯さんのように散ってしまうのではないかと思った」 と誰かは言いました。でも私の目に映った「彼」は地を踏みしめて前に進もうとしていた。倒れ込んで下を向いていた「彼」は強くなって前に進んだ。私もきっとこれから倒れ込んで下を向きたくなる時がたくさん来ると思います。でもその時にあの「あやめの彼」を思い出して、少しずつ前に進んでいきたいと思います。素敵な世界をありがとうございました。私は加藤さんが大好きです。